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『ぼくがぼくであること』(山中恒・岩波少年文庫)
ぼくがぼくであること (岩波少年文庫 86)ぼくがぼくであること (岩波少年文庫 86)
(2001/06)
山中 恒

商品詳細を見る


<あらすじ>(ネタバレです)

小学6年生の平田秀一(ヒデカズ)は、優秀な兄弟(兄2人・姉1人・妹1人)のなかで
“落ちこぼれ”的な存在のため、
口うるさい母親から、しょっちゅう小言を言われている。

秀一は母親の小言や、同じ小学校に通う妹の告げ口などに辟易して、
行き当たりばったりで、夏休み中に家出を決行する。

秀一は公園の脇に停まっていたトラックの荷台に乗り込むが、
そのトラックが走行途中にひき逃げをするのを目撃する。

運転手に気付かれないように逃げ出した秀一がたどり着いたのは、
同学年の少女、夏代とその祖父が2人で住んでいる民家だった。

秀一は、その家でひと夏を過ごすうちに、様々なことを経験する。
そして、夏の終わりに家に帰ることになった秀一は、
「この世の最大の敵」のように思っていた母親が、
自分の思うようにならないと泣き喚く「あかんぼう」のようだと思い、
哀れで愚かな人だと考えるようになる。

しかし、秀一が夏代への手紙をポスト出したにもかかわらず、
母親に唆され妹が、悪知恵を働かせて手紙を盗み出してしまった。

それを知って激怒する秀一。
あまりの怒りで、妹を殴り、
母親に対しても、思わずものさしを握り締めた秀一だったが、
その時、
大学生の長男の良一(ヨシカズ)が学生運動に巻き込まれ検挙されるという事件が起きる。

そして同じ頃、高校生の次男の優一(マサカズ)は、
学校の教師の不正事件に巻き込まれ、母親は逆上。

それらのことが重なり、
平田家の<なにか>が崩れようとしていた。

そして、再び夏代の家を訪れた秀一は、
トラックのひき逃げ犯人でもあり、
夏代の祖父の所有する山を狙うワルの正直(マサナオ)と対峙し、
夏代の祖父が隠していた夏代の母の秘密を知ることになる。

事件が解決して、帰宅した秀一が目にしたのは、
家が火事になったあとの残骸だった。
(家族は全員無事)

母親の不注意から火事になったと兄から聞く秀一。
母親はショックで寝込み、家が好きだった妹は悲しむが、
秀一と他の兄弟は悲壮感は漂わず、

「この家はおれたちの家じゃなくて、
おふくろさんの城だったから(かなしくないん)だろうなぁ」

と話す。

そして秀一は思う。

「おふくろさんはおれの顔なんか、見たくないっていうかもしれない…
でも、おれはこの顔を見てもらおう。おふくろさんはおれをなぐるかもしれない。
…でも、おれはよけないでおこう。おれは、やっぱりおふくろさんの子だということを、
わかってもらおう。
そしてやっぱり、おれはおれであることも、わかってもらおう!―」



感想は「続き」に書きます。
----------------------------------------------------------------

<感想>

なかなかハードな内容ですが、一気に物語に引き込まれます。
まず、秀一の母親の教育ママっぷりがスゴイ。

本当は好きな人がいたにもかかわらず、
周囲の人に勧められて、今の夫を婿に貰うことになった母親。

世間体を気にして、生まれた子ども達に過度な期待をかけ、
母親の<権威>をふりかざして、
子どもたちを支配しているようにも思えます。

秀一以外の家族は、諦めている部分もあるのか、
みんなある程度、口やかましい母親のいいなりになっています。

だからこそ、母親は、
自分の言うことをきかない秀一を目の敵にしていたのでしょう。

これだけ書くと、なんだか酷い母親のように見えますが、
彼女は彼女なりに子どもたちを愛してはいるんですよね。

火事になったときに、秀一の姿が見えないと気付くと、
母親は、きちがいのようになって、火に飛び込もうとして、
皆におさえられています。

(=秀一はその頃、夏代の家にいました)

きっと、愛してはいるけれど、
愛する方向を間違っていたのでしょうね・・・・。

そして、ひと夏の間に、様々なことを経験した秀一も成長します。

それまで、家庭と学校と言う2つの場所しか知らなかった秀一は、
夏代とおじいさんとの出会いや、色々な事件を通して、
自分と家族を客観視することができるようになり、
「自分が自分であること」
の大切さを実感するのです。

本のあとがきで、児童文学評論家の野上暁(のがみ・あきら)氏は、
作者の山中恒について、
戦争中に子ども時代を過ごした作者が、
戦後の大人たちの態度の豹変振りに、
すっかり「大人不信」になったと述べています。

そして、

「大人にたよらず、自分が自分のことをしっかり考え、
 『ぼくがぼくであること』の大切さを思うのは、
 そういった個人的な体験から生み出されたもの」


と指摘しています。

これは、戦争を経験した人たちの体験談などを聞くと、
同じようなことをおっしゃる方も多いのでわかる気がします。

戦争中は「お国のために死ね」と教えられ、
戦後は、手の平を返したように、「暴力反対」と間逆な態度をとる大人たちに対して、
子どもたちは、疑問と失望を深く心に刻んだのではないでしょうか。

でも、これは、今の時代にも言えることだと思います。

様々な情報が氾濫しすぎている今は、
何が正しくて、何が間違っているかも、混沌としがちです。
そして、膨大な情報量に流されそうになるときもあります。

だからこそ、大人も子どもも「自分が自分であること」を芯として、
自分と他者を客観的に見つめて、
出来事を、様々な角度から見つめなおして
冷静に判断を下す必要があるのでしょう。

渦中にいて、色んな思いが錯綜して、頭が混乱しているときは、
これが、なかなか難しいんですけどね

この作品は、1969年に発表されたものですが、
その頃はちょうど学生紛争が盛んな時期で、
それも作品に反映されています。
(→秀一の大学生と高校生の兄たちの事件)

でも、今の時代に読んでも、
色々と考えさせられることの多い作品です。

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【2009/08/09 18:54】 児童書 | TRACKBACK(-) | COMMENT(1) |
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